携帯電話がかぎになるスリラー映画として話題を呼び、1日から公開が始まった「XX(エクスクロス) 魔境伝説」。原作を執筆した上甲宣之さん(33)は大阪在住で、しかも日常は新阪急ホテル(大阪市)のベルボーイとして働きながら、執筆を続ける“二足のわらじ”生活。両立は大変だが「ホテルにはいろんな人が来るし、物語になりそうな『ドラマ』も多い」と明るく話す。
短く刈った髪に端正な顔立ち。赤の制服に身を包み、客の横に自然に歩み寄る。エレベーターまでさりげなく誘導する姿は完全なるホテルマンだが、小説も5作を数えると、「近くの書店で(僕のことを)知った人から声をかけられると照れます」と笑う。
本好きが高じて、大卒後はいったんフリーターとなって執筆活動を続け、文学賞に応募し続けた。だが将来も考え、25歳ごろから専門学校にも通い、ホテルへの就職も目指すことに。
一方で、今回の映画の原作でもある「そのケータイはXX(エクスクロス)で」が、宝島社の第1回「このミステリーがすごい!」大賞(平成14年)で話題を呼んだ。受賞は逃したものの翌年には出版が決まり、今回映画化の栄誉も得た。
温泉地を訪れた女子大生2人が、突然襲ってくる村人らと死闘を展開するストーリー。娯楽性を重視した結果、ミステリーやアクション、コメディーまでも詰まったぜいたくな作品となった。「本は結局、一種の余暇。その瞬間を熱中し、いろんな思いをめぐらせてもらえればいい」と話す。
ホテル側も上甲さんの快挙を好意的に受けとめており、現在夕方から深夜までホテルに勤め、深夜から朝まで執筆する日々が続く。「自分の書いたものが、絵になるのは不思議」という上甲さんは「映画を見て、原作にも興味を持ってもらえればうれしい」と話している。
(12月2日配信 産経新聞)
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