新人アーティストのブレークが続くレコード会社大手、ユニバーサルミュージック(東京都港区)。今年上期にシングル売り上げ首位を記録した青山テルマ、今年の新人で初のアルバム首位を飾ったキマグレン、と話題は尽きない。音楽市場の伸び悩みをよそに、ヒット創出を続ける同社の戦略を探る。(堀口葉子)
ユニバーサルミュージックは今年上期(1~6月)、CDの生産実績ベースのシェアを、前年同期の15.2%から17.5%に引き上げた。好調の要因の一つが収益性の高い新人のブレークだ。
青山テルマ feat.SoulJaのシングル「そばにいるね」(1月23日発売)は、「着うたフル」で音楽史上初の200万ダウンロードを達成、CDでは今年上期のシングル首位となる44万枚を売り上げた。
最新のオリコンアルバムチャートでも、2位にGReeeeNのアルバム「あっ、ども。おひさしぶりです。」(6月25日発売、現在の総売り上げ64万枚)、3位にはキマグレンのアルバム「ZUSHI」(7月16日発売、同7万枚)が続く。いずれも上位は同社の新人が占め、入れ替わりが早いチャート内で好成績を維持している。
新人が次々ブレークする背景を小池一彦社長兼COOは、「デジタル配信とパッケージCDの共生が功を奏した」と説明する。
「昨年からブレークしている当社の新人たちには、すべて共通点がある。それは、CD発売前、携帯電話の『着うた』の段階で、楽曲に飛びついたユーザーが多かったこと。その動向が当社の戦略や読みとは違っても、当社では『着うた』の動向次第でマーケティング戦略を変えるようにした。結果、ユーザーの反応に合致した展開ができている」
つまり、デジタル配信を単に収益の一部とみるのではなく、市場動向のデータとして活用。「着うた」のデイリーダウンロード数5000を分岐点に、この数字以上が連日続く新曲のCDには、徹底的に宣伝販促を強化している。
例えばキマグレンの場合、シングル「LIFE」(5月14日発売)は4月からFM局でパワープレー(大量オンエア)を獲得したことを機に、CD発売前に連日5000ダウンロード以上を達成。6月にはKDDI(au)のCMソングに起用されたことで、合計150万ダウンロードにもなり、同社は宣伝販促に加え、アーティストの露出強化に踏み切った。
「シングルが売れれば、収益の高いアルバムのヒットにつながる。デジタル配信とパッケージCDの共生という戦略で、新しいスターがどんどん生まれた今年上期を振り返ると、大成功といえる」と小池氏は胸を張る。
今年下期は、7月9日にシングル「パノラマ」でデビューしたヨースケ@HOMEや、8月13日にシングル「君のすべてに」を発売するSpontania feat.JUJUらについて、小池氏は「必ずヒットさせる」と自信をみせる。
同社が新人のブレークと判断する基準はCD10万枚出荷以上。昨年は、ET-KINGやSoulJaら新人14アーティストが達成しており、今年はその数を上回る計画だ。音楽市場の不振をよそに、勢いは増すばかりだ。
(7月31日配信 産経新聞)
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