テニスの全仏オープンに出場した日本人ダブルス選手が意図的に負けた可能性はないか、国際テニス連盟が調査開始を発表したと新聞各紙が報じた。選手が試合後にコーチの一言を暴露したのがきっかけとされているが、選手のマネージャーは、「八百長などするわけがない」と完全否定している。
「あまり勝ってほしくないんだよね」
「八百長疑惑」騒動が生じたのは、全仏オープン試合後の記者会見における発言がきっかけだった。2008年5月30日に行われた女子ダブルス1回戦に出場した森上亜希子選手(28)が、試合前に日本のナショナルチームコーチの一人から次のように言われたと明かしたのだ。
「あまり勝ってほしくないんだよね」
新聞各紙によると、この試合でペアを組んだ中村藍子選手(24)は、シングルスの世界ランク71位で、シングルスで北京五輪出場が危うい状況だった。60位前後までとされる出場権を得るには、6月9日付のランクを上げなければならない。そこで、コーチは、全仏ダブルスで勝てば、2日からイギリスで開かれるシングルスの大会に出場できなくなることを危惧して森上選手らに言った、というのだ。
森上選手は記者会見で、「試合前の選手に言う言葉じゃない」とコーチを批判した。しかし、中村選手のコーチではないという。ダブルスの試合では、森上・中村ペアは、第4シードの台湾選手ペアに0-6、1-6で完敗している。
各紙によると、この発言を巡って、意図的に試合に負けた可能性があるとして、国際テニス連盟が5月31日、全仏の主催者による調査を行うと発表した。八百長疑惑まで報じられた同連盟は、「われわれは勝敗を操作するあらゆる接触を許さない。今回は五輪精神に反することでなおさら残念だ」とのコメントを出した。ただ、広報担当者は6月1日、「調査中であること以外に説明できることはない」と話したという。
この騒ぎに対し、森上選手は、公式ブログで6月2日、「お伝えしたいこと」と題する一文を載せた。そこでは、記者会見での発言について、中村選手ら関係者に「多大なご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます」と謝罪。「試合の結果は、満足のできるものでは無く、とても悔しく残念ですが、最善を尽くした結果です」として、八百長疑惑を否定した。ブログは、アクセスが殺到したためか、表示しにくくなっていた。
「本意でないことを書かれ、本人は憤慨しています」
日本にいる関係者も対応に追われ、今回の騒ぎに困惑を隠さない。
森上選手のマネージャーは、J-CASTニュースの取材に対し、「現在の状況では、お答えすることが何もないんです」と戸惑った様子。そのうえで、「記者会見の発言について本意でないことを書かれ、本人は憤慨しています。『八百長疑惑』とメディアで出ていますが、全力で試合をしたのになぜか分かりません。2人がベストを尽くそうと話し合った中で臨んだダブルスだったので、八百長なんてするわけがありません」と疑惑を完全否定した。
一方、中村選手のマネージャーも、J-CASTニュースに対し、コーチの言葉からの影響を否定した。「言ったのは中村のコーチではありませんし、たとえ聞いたとしても、聞き流すのが普通です。プレーは、どんな場合も一生懸命やっています。八百長なんてとんでもない話で、いいかげんなことを書いてもらうと本人が傷つきます」。6月2日からのイギリスの大会には、予定通り出場しているという。
この問題では、日本テニス協会も対応に追われている。事務局長は、「事実関係がつかめず、私どもも調査中です。森上選手はブログで(八百長疑惑を)否定していますし、協会として正式なコメントはまだできません」と話している。
世界のテニス界では、男子の世界ランク4位にまでなったロシアのニコライ・ダビデンコ選手に07年、不正な賭博による八百長疑惑が浮上した。また、国際テニス連盟などは08年5月19日、過去5年間に45試合で不正の疑いがあったとの調査報告書を公表している。森上選手の発言問題も、こうした背景がある中で、大きく取り上げられたようだ。
(6月2日配信 J-CAST)
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